
画像:Amazon.co.jp
夜行観覧車
Audible 版の再生時間
聴き放題の対象(2026年10月時点)
ひとことレビュー
面白かったかと聞かれると、正直そうでもない。なのに、殺人事件より向かいの家の母娘げんかが頭に残り、自分ならどう向き合うだろうかと考え込んだ。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
湊かなえさんの作品だから。理由はそれだけです。
オーディブルでの評価は、そこまで高くありません。昔ドラマになっていたことも知らず、見たこともありませんでした。それでも湊かなえ作品なら、と再生して、1.4倍速で3日ほどで聴き終えました。
どんな作品?(ネタバレなし)
舞台は高級住宅地「ひばりヶ丘」。エリート一家の高橋家で、父親が殺され、母親が加害者になるという事件が起きます。
その向かいに住むのが遠藤家です。母の真弓(まゆみ)は、無理をしてこの街に家を建てました。娘の彩花(あやか)は中学受験に失敗してから、家の中で荒れ続けています。
事件のあった家と、向かいの家。物語は二つの家族の視点を行き来しながら、真相に近づいていきます。
殺人が起きた家より、向かいの家に引っかかる
事件の中心は高橋家です。ところが、聴いていて心が動いたのは、そちらではありませんでした。
加害者の家族というだけで、石を投げられ、中傷のビラを貼られる。つらい話ですが、想像できる範囲です。
引っかかったのは、何の事件も起きていない遠藤家のほうでした。
彩花が癇癪を起こして、母親の作ったご飯をぶちまけます。物を投げて壊します。母親が大切にしていた家の床にまで、傷をつけます。ずっと耐えてきた真弓は、そこでとうとう堪忍袋の緒が切れます。娘を殺さんばかりの勢いです。
そりゃそうだ、と思いました。好き放題にさせて、我慢して、それでもどうにもできない。その苛立ちと怒りが、この場面に全部詰まっていました。
二つの家で起きていたことは、同じだった
遠藤家がここまで歪んだ原因は、突き詰めれば一つです。親の期待が高すぎた。娘はそれに応えられなかった。それだけのことで、家族はここまで壊れるのかと思わされます。
そして、同じことが高橋家でも起きていました。息子の慎司(しんじ)は、バスケがしたかった。
人には向き不向きがあります。期待されたところまで行けないこともあります。それを親が読み切れないまま、できない方向へ無理に進ませると、いい結果にはなりません。
事件が起きた家と、起きなかった家。根っこにあるものは同じでした。
自分の子どもが、失敗を人のせいにしたら
私にも子どもがいます。思春期に入ったらどう変わるのか、予想もつきません。
彩花は、自分の失敗を人のせいにします。もし自分の子どもが同じ姿勢を見せたら、そのとき私はどう対応するのか。聴きながら、それを考えていました。
子どもをよく観察して、理解する。適性や興味、好きなことに目を向ける。親にできる最善のことは、結局それなのだと思います。
正直、聴いていて楽しくはない
ここまで書いておいて何ですが、面白い作品だとは思いませんでした。
歪んだ性格の人物が多いのです。家でヒステリックに荒れる娘。事件のあった家に石を投げ、ビラを貼る近所の女性。その内なる声を聴き続けるのは、かなりのストレスでした。なぜこんな考え方になるのか、と何度も思います。
ナレーターは安田章大(やすだ・しょうた)さん。ドラマ版で高橋家の長男を演じた方です。ストーリーは★3ですが、オーディブル適性は★4にしました。ストレスを感じるほど、人物の内面が耳に届いたということでもあるからです。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 思春期の子どもがいる親、これから迎える親
✅ 人の内面のいやな部分まで描く、湊かなえ作品が好きな人
✅ 事件の謎より、家族の中で何が起きていたのかを知りたい人
❌ 登場人物に共感しながら聴きたい人
❌ 聴いていてストレスがたまる話が苦手な人
まとめ:親にできるのは、子どもをよく見ること
「親の期待が、子どもと家族を追い詰めていく物語」。
面白かったとは言えません。ただ、あの母娘の喧嘩と、「自分ならどう向き合うか」という問いは、聴き終わったあとも残っています。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:安田章大 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:3日間
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
同じ湊かなえさんの作品です。こちらは、誰かのために動く人たちの話でした。人の歪みを聴き続ける『夜行観覧車』とは、後味がまったく違います。



