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ひとことレビュー
クレーム対応ひとつをきっかけに、主人公が謝り、打ち明け、一気に動き出す。その走り出し方がすがすがしくて、「この感じはわかる」と思った。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
『ひと』『まち』と聴いてきたので、その続きとして再生しました。
『まち』で学んだとおり、今回も主人公は別人です。同じ〈下町荒川青春譚(せいしゅんたん)〉シリーズの3作目にあたります。
1.4倍速で、3日ほどで聴き終わりました。
どんな作品?(ネタバレなし)
主人公は三上傑(みかみ・すぐる)。スーパーで働いています。
傑には大学生の妹、若緒(わかお)がいます。その若緒が、交通事故で足を引きずるようになりました。運転していたのは、傑の友だちであり、若緒の恋人でもある大河(たいが)です。
家族ぐるみの付き合いだった大河をめぐって、家の中はぎくしゃくしています。両親の喧嘩は絶えず、若緒は就活に苦戦中。傑は、家族にも友だちにも、どう接すればいいのかわかりません。
クレーム対応ひとつで、止まっていたものが動く
いちばん印象に残ったのは、傑がスーパーでクレームに対処する場面です。
事故とも家族とも関係のない、仕事上の出来事です。ところがこの対応をきっかけに、いがみ合っていたパートの女性との仲が良くなります。
そこからが早いのです。傑は、わだかまりを残したままにしていたことに、立て続けに踏み出していきます。謝る。自分の気持ちを打ち明ける。それまで止まっていたものが、一気に動き出します。
きっかけは偶然。でも、動かざるを得なくなる
面白いのは、傑が「よし、変わろう」と決意して動いたわけではないところです。
きっかけは偶然だったのかもしれません。ただ、クレームは目の前に来てしまえば、対処するしかありません。無理やりにでも、自分が動かざるを得ない状況になる。それで一歩が出て、そのまま走り始めてしまった。そんな感じでした。
この感じは、自分もわかる気がします。一つのことで意識が変わって、そこから一気に人に会ったり、自分のことを話したりする。そういう時期が、私にもあります。
いちばん重いのは、最初の一歩なのだと思います。そこさえ出てしまえば、あとは勢いで進める。傑が走り出していくのを聴いているのは、すがすがしいものでした。
3作聴いてわかった、このシリーズは成長の話
3作を聴き終えて改めて思うのは、このシリーズの芯は主人公の成長だ、ということです。
どの主人公も、暗い過去を持っています。それを引きずっていて、自分の成長を妨げてもいる。それでも乗り越えて、前に進んでいきます。だから重い設定でも、ポジティブに聴けます。
そして、動き出すきっかけはいつも小さいのです。『ひと』はコロッケ、『まち』は部屋に出た虫、『いえ』はクレーム。人が変わるのに、大きな事件はいらないのだと思わされます。
ナレーターは3作続けて浅木俊之さん
ナレーターは『ひと』『まち』と同じ浅木俊之さんです。3作とも同じ声なので、続けて聴いてもすっと入れます。1.4倍速でも問題ありませんでした。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 『ひと』『まち』を聴いてきた人
✅ 謝れないままの相手や、言えないままのことがある人
✅ 主人公が前を向いていく話を、ポジティブに聴きたい人
❌ 家族の不和や、暗い過去を扱う話が苦手な人
❌ 派手な展開やどんでん返しを求める人
まとめ:一歩踏み出す勇気は、日常で試される
「一つのきっかけで、止まっていた人が走り出す物語」。
一歩踏み出す勇気は、日常生活のちょっとした場面で、たくさん試されています。謝るかどうか。話すかどうか。傑がそれを一つずつ越えていくのを聴いて、すがすがしい気持ちになりました。
聴いた日:2026年9月 / ナレーター:浅木俊之 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:3日間
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
同じシリーズの2作目です。こちらは「一歩踏み込んで人を助ける」話でした。『いえ』が自分のために踏み出す話なら、『まち』は人のために踏み込む話です。
→小野寺史宜『まち』で、一歩踏み込めない自分に気づいた。『ひと』の続きではなかったけれど2日で聴いた【オーディブル感想】



