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まち
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ひとことレビュー
『ひと』の続きだと思ったら、主人公は別人だった。でも、見返りを求めずに一歩踏み込んで人を助ける瞬一を見て、自分もそうありたいと思った。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
前作『ひと』が「え、ここで終わり?」というところで終わったので、あの先が知りたくて、すぐに続編の『まち』を再生しました。
ところが、主人公が別人です。これには面食らいました。『ひと』のその後は出てこないので、正直、肩透かしです。
それでも2日で聴き終えました。瞬一の話は瞬一の話で、面白かったからです。
どんな作品?(ネタバレなし)
主人公は江藤瞬一(えとう・しゅんいち)。両親を亡くし、尾瀬で歩荷(ぼっか)をしている祖父に育てられました。歩荷は、山小屋まで荷物を背負って運ぶ仕事です。
後を継ぎたいと言った瞬一に、じいちゃんは「東京に出ろ」と返します。人と交われ。人を守れる人間になれ。
それから四年。瞬一は荒川沿いのアパートに暮らし、引越しのバイトを続けています。考え方は独特ですが、憎めない青年です。
『ひと』と同じ〈下町荒川青春譚〉シリーズの2作目にあたります。
虫退治から、隣人づきあいが始まる
隣の部屋には、母と娘が二人で暮らしています。ある日、その部屋に虫が出て、二人が騒いでいる。瞬一は入っていって、助けます。
それだけのことです。でも、ここから隣人としての付き合いが始まります。
『ひと』では、コロッケを一個譲ったことが始まりでした。このシリーズでは、こういう小さな一歩から人と人がつながっていきます。
苦手な火を前にしても、体を張って守る
その一歩は、だんだん大きくなります。
隣の母娘のもとに、元夫が現れます。娘にとっては父親です。よりを戻そうと迫ってくるその人から、瞬一は体を張って二人を守ります。
しかも瞬一には、火に対するトラウマがあります。その苦手な火がある中で、それでも乗り越えようとする。ここがとても印象的でした。
じいちゃんの「人を守れる人間になれ」は、こういうことだったのだと思います。
辞めていく友人に、仕事を紹介する
もう一つ好きだったのが、友人の話です。
引越しのバイト先でできた、癖のある友人。その彼が喧嘩をして、会社を去っていきます。瞬一は、去っていく彼に仕事を紹介します。
何かが返ってくるわけではありません。ただ助けようとしている。この見返りを求めないところが、とてもいいのです。
一歩踏み込まない自分は、誰にでもいる
虫退治も、元夫も、辞めていく友人も、瞬一が関わらなくても済んだことです。見て見ぬふりをしても、誰にも責められません。
きっと誰にでも、助けられるのに一歩踏み込まない自分がいるのではないでしょうか。私もそうです。おせっかいかもしれない、と考えて止まってしまいます。
瞬一は違います。おせっかいかどうかではなく、純粋に助けたいから踏み込む。
自分もそうありたい。次に誰かを助けられる場面が来たら、一歩踏み込みたい。聴き終わって、そう思いました。
ナレーターは『ひと』と同じ浅木俊之さん
ナレーターは前作と同じ浅木俊之さんで、今回もとても聴きやすかったです。
男女のキャラ分けも自然で、誰が話しているのかがすっと入ってきます。1.4倍速でも問題ありませんでした。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 『ひと』の空気が好きだった人
✅ 人を助けたいのに、あと一歩が出ないことがある人
✅ 聴きやすいナレーションで、安心して聴ける作品を探している人
❌ 『ひと』の主人公のその後を知りたい人
❌ 派手な展開やどんでん返しを求める人
まとめ:助けたいなら、一歩踏み込めばいい
「見返りを求めずに、一歩踏み込んで人を助ける青年の物語」。
身近な出来事ばかりで、飾りがありません。その中で瞬一が少しずつ成長していくのが、このシリーズの良さだと思います。『ひと』の続きではありませんでしたが、聴いてよかった一冊です。
聴いた日:2026年9月 / ナレーター:浅木俊之 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:2日間
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
同じシリーズの1作目です。主人公は別人ですが、こちらはコロッケ一個から人とのつながりが始まります。『まち』の前に聴くなら、まずはこちらからどうぞ。
→小野寺史宜『ひと』は暗いのに温かい。「え、ここで終わり?」で続編を再生した、3日で聴いた本屋大賞2位【オーディブル感想】



