
画像:Amazon.co.jp
そうだ小説を書こう
Audible 版の再生時間
聴き放題の対象(2026年10月時点)
ひとことレビュー
物語を楽しむつもりで聴いたら、中身は小説の指南書だった。期待とは違ったけれど、好きな作家の読みやすさがどんな工夫でできているのかがわかった。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
山本甲士さんは、私の好きな作家です。
その作品が最近オーディブルで配信されました。評価も割と高い。期待して再生しました。
どんな作品?(ネタバレなし)
主人公は、会社を左遷され、妻と離婚し、東京から佐賀へ転勤になった男性です。小学三年生の息子とも、うまく話ができなくなっています。
ある日、図書館で子どもが楽しそうに本を抱えているのを見て、自分も物語を書いてみたいと思い立ちます。
そこから主人公は、小説の書き方を一から学んでいきます。その学びが、そのまま読者への指南になっているのがこの本の特徴です。佐賀に住む作家として、山本甲士さん本人も作中に登場します。
物語を期待すると、少し肩透かし
正直に言うと、期待していたものとは少し違いました。
『ひなた弁当』や『ひかりの魔女』のような物語を楽しむつもりでいたのですが、この本の中心は、小説の書き方です。これまでの作風とはだいぶ違います。純粋な物語作品だと思って聴くと、物足りなさが残ります。ストーリーを★3にしたのは、そのためです。
ただ、ファンとしては別の収穫がありました。
読みやすさには、ちゃんと理由があった
作中には、小説を書くためのアドバイスがいくつも出てきます。
誰の視点で語っているのかをはっきりさせる。登場人物を少なくする。場面転換を少なくする。背景や説明をそのまま書くのではなく、登場人物の視点を通して語る。
聴きながら、なるほどと思いました。山本甲士さんは、こういうことを考えて作品を書いていたのかと。
一読者として、山本作品の読みやすさは感じてきました。それは偶然ではなく、こうした工夫の積み重ねだったのだとわかります。視点がぶれず、人物も場面も絞られている。耳で聴く読書では、それがそのまま聴きやすさになります。
好きな作家の、読みやすさの種明かし。この本のいちばんの価値は、ここにありました。
作中の「山本甲士」は、意外と辛口
もうひとつ気になったのが、作中に出てくる山本甲士さんの人物像です。
ほんわかした作品を書く方なので、ご本人も優しそうな人だというイメージを持っていました。ところが作中の山本甲士さんは、だいぶざっくばらんで、少し高飛車にも見える作家です。他人に対しても、やや厳しい目線を持っています。
実際のご本人もこういう方なのでしょうか。この本を聴いて、少し印象が変わりました。
作中に出てくる児童文学が、面白い
主人公が書くのは、子ども向けの物語です。その作品の一部が、作中で実際に読まれます。これがまた面白いのです。
特に良かったのが、未来日記のようなものをつける話です。本当はこうしておきたかった。別の自分だったら、こうしていた。そういうことを書き連ねていくうちに、日記の中の自分と実際の自分が、だんだん近づいていきます。
『ラチとらいおん』という絵本を思い出しました。弱虫の男の子が、小さならいおんに助けられて強くなっていく話です。
これを聴いて、自分も小説を書いてみようかな、と思いました。一瞬だけですが。
ナレーターは川端快彰さん
ナレーターは川端快彰さんです。とても聴きやすい読み方でした。
人物の区別がはっきりしていて、キャラクターをそれぞれ演じ分けています。1.4倍速で聴きました。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 山本甲士のファンで、作品の裏側を知りたい人
✅ 小説を書いてみたい人、書き方に興味がある人
✅ 児童文学や童話が好きな人
❌ 『ひなた弁当』のような物語を期待している人
❌ 物語の途中に解説が入るのが苦手な人
まとめ:好きな作家の、読みやすさの種明かし
「小説を書く父親の物語を通して、小説の書き方がわかる本」。
物語を期待すると肩透かしをくらいます。でも、山本甲士さんの作品がなぜすっと入ってくるのか、その理由を知ることができました。次に山本作品を聴くときは、視点や場面の数に気づいてしまいそうです。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:川端快彰 / 再生速度:1.4倍速
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
山本甲士さんらしい、ほんわかした物語を聴くならこちらです。今回わかった読みやすさの工夫が、実際にどう効いているのかを確かめられます。



