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まいまいつぶろ
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ひとことレビュー
言葉を聞き取ってもらえる場面は面白い。でも将軍になってからの家重の活躍を待っているうちに終わってしまい、面白そうなテーマを活かし切れていない気がした。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
聴く前に分かること
こんな人に
江戸中期の将軍家に興味がある人、主従の絆を描いた話が好きな人、歴史小説の言い回しに慣れている人
おすすめの人
- 徳川家重や大岡忠光など、江戸中期の将軍家に興味がある人
- 主従の絆や、理解者がひとりだけいる物語に弱い人
- 歴史小説の言い回しや、人物の改名に慣れている人
- 直木賞候補作・時代小説大賞の受賞作をチェックしておきたい人
向かない人
- 『のぼうの城』のように、侮られた主人公が大活躍する展開を期待する人
- 名前の多い歴史小説を耳だけで追うのが苦手な人
- ながら聴きで気軽に聴きたい人
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なぜこの作品を選んだのか
オーディブルでの評価がとても高かったので、興味を持ちました。
それに加えて、将軍の子息の言葉をただ一人聞き取れる少年の話、というテーマが面白そうだった。歴史小説でこの設定なら間違いないだろう。そんな考えで手に取って聴き始めました。
結論から言うと、自分にはあまり面白くなかった。期待が大きかったぶん、聴き終わったときの物足りなさも大きかったです。
どんな作品?(ネタバレなし)
8代将軍・徳川吉宗の長男、長福丸(ちょうふくまる)。のちの9代将軍・家重です。
生まれつき身体に麻痺があり、言葉がはっきり話せず、失禁も止められない。歩いた跡が残ることから「まいまいつぶろ(カタツムリ)」と呼ばれて蔑まれ、廃嫡まで噂されています。
そこに現れるのが、小姓の兵庫(ひょうご)。のちの大岡忠光です。誰にも聞き取れなかった長福丸の言葉を、なぜか兵庫だけが聞き取れる。以来、兵庫は長福丸の「口」として、生涯そばに仕えていきます。
誰も理解してくれなかった若君と、後ろ盾のない小姓。二人の孤独な戦いが、吉宗の治世から家重の時代まで、長い時間をかけて描かれていきます。
「将棋ができます」。最初の出会いは、やっぱり面白い
一番面白かったのは、兵庫と長福丸の最初の出会いです。
誰にも聞き取れないはずの長福丸の言葉を、兵庫が「将棋ができます、と仰せです」と訳してみせる。周りはもちろん、兵庫自身も驚いている。そこからやり取りが続いていき、周囲が心底驚いていく。この展開は聞き入りました。
蔑まれていた将軍の跡継ぎが、実は話せなかっただけで、とても頭がよくて優秀だった。それが通訳をする兵庫のおかげで、周りにも分かっていく。ここは素直に面白かったです。
妻となる比宮(なみのみや)との関係も良かった。最初はうまくいかず、忠光を介してしか話せなかったのが、少しずつ、少しだけなら直接話ができるようになる。忠光を通さない、夫婦だけの仲ができていくところが良かったです。
その一方で、話ができないなら生まれてこなくていい、と願った子が、本当に生まれてこなかった場面は悲しかった。ところどころに、こういう聞き入る場面はあります。
将軍になってからの活躍を待っているうちに、終わった
ただ、思ったよりも家重の活躍がなかった。これが一番の物足りなさです。
せっかく優秀だと分かったのだから、将軍になってからは将軍らしい活躍を見たかった。政治的な場面がないわけではありません。でも、家重らしさ、つまり彼灮人柄や頭の良さを使った活躍が見られない。
自分が期待していたのは、『のぼうの城』のような展開です。周りから侮られている主人が本当は優秀で、いざという時に大活躍する。そういうストーリーがあると面白かったと思うのですが、そういうシーンが欠けていました。
途中でやめようかと思ったこともあります。それでも最後にどうなるか、何か大きな話があるのだろうと思って聴き続けた。結果、そういうこともなく終わりました。
家重や忠光の壮大な人生の全体が見える作品ではあります。ただ、面白そうなテーマを活かし切れていない気がしました。個人的には、ですが。
ナレーションは良かった。家重の声の雰囲気まで伝わってきた
ナレーターは土屋トシヒデ。これは問題ありませんでした。聞きやすいし、家重の声の雰囲気が伝わってきます。
特に、兵庫が家重の言葉を訳す場面。家重の分からない言葉を、兵庫が明瞭に伝え直す様子と、その真摯さがちゃんと伝わってきました。この作品の肝になる場面なので、ここが良かったのは大きい。
乗れなかったのは、朗読のせいではありません。
名前が覚えられない。耳で聴く歴史小説の壁
ストーリーを追うのが難しかった理由は、別のところにあります。
同じ人物に別の名前があったり、成長するにつれて違う名前があてがわれたりする。長福丸が家重になり、兵庫が忠光になる。家重にいたっては、呼び方がいくつもあったはずです。それが何人分も重なると、少し混乱します。
さらに、それが役職なのか名前なのか分からないところもちらほらありました。「御側御用取次(おそばごようとりつぎ)」「御台所(みだいどころ)」のように、役職や立場で人を呼ぶ場面が多いからです。
これはオーディブル特有の問題で、耳だけで名前を覚えるのが難しい。こういう時は漢字が見えると便利だなと、聴きながら何度も思いました。
もう一つは言葉づかいです。歴史小説独特の言い回しや言葉が多用されていて、話が頭に入ってこない。会話は現代語を多めにして、単語など一部に歴史的な言葉を使う。そのくらいのバランスにしてもらえると、ストーリーとして追いやすかったと思います。
ながら聴きには向きません。流し聴きだと、誰の話をしているのか分からなくなります。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 徳川家重や大岡忠光など、江戸中期の将軍家に興味がある人
✅ 主従の絆や、理解者がひとりだけいる物語に弱い人
✅ 歴史小説の言い回しや、人物の改名に慣れている人
✅ 直木賞候補作・時代小説大賞の受賞作をチェックしておきたい人
❌ 『のぼうの城』のように、侮られた主人公が大活躍する展開を期待する人
❌ 名前の多い歴史小説を耳だけで追うのが苦手な人
❌ ながら聴きで気軽に聴きたい人
まとめ
将軍の息子の言葉を、ただ一人聞き取れる少年。このテーマは本当に面白そうだったし、「将棋ができます」の出会いの場面は実際に面白かった。
でも、その先の将軍らしい活躍を待っているうちに、物語は終わってしまった。侮られている主人が実は優秀で大活躍する、そういう話を期待していた自分には、物足りなかった。名前と言い回しの壁もあって、ストーリーを追うのに苦労した5日間でした。
面白そうなテーマを、活かし切れていない。それが自分の正直な感想です。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:土屋トシヒデ / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:5日間
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