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デフ・ヴォイス
Audible 版の再生時間
聴き放題の対象(2026年10月時点)
ひとことレビュー
感動ものだと思って再生したら、本格的なミステリーだった。ろう者が「障害者」として見られている現実と、手話が2つの言語であることを知った一冊。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
聴く前に分かること
こんな人に
ろう者の世界を小説で知りたい人、人間ドラマの厚みがあるミステリーが好きな人、シリーズものの1作目を探している人
おすすめの人
- ろう者の世界や手話について、小説を通して知りたい人
- 謎解きだけでなく、人間ドラマの厚みがあるミステリーが好きな人
- シリーズものの1作目から入りたい人
向かない人
- とにかく泣ける感動ものを期待している人
- スピード感のあるサスペンスを求めている人
レビュー全文を読む
なぜこの作品を選んだのか
Audibleのレビュー評価が高く、コメントも軒並み好意的だったのがきっかけです。
ろう者を題材にした小説はほとんど読んだことがなく、どんな世界が描かれるのか興味を持ちました。レビューの様子から「感動する話」だと思って再生しました。
シリーズものですが、聴いたのはまだ1巻だけです。
どんな作品?(ネタバレなし)
一言でいうと「ろう者の家族に育った手話通訳士が、法廷で事件と向き合う社会派ミステリー」です。
主人公の荒井尚人は、ろう者の両親と兄を持つ、家族でただひとり耳が聞こえる「コーダ」。埼玉県警の事務職を辞めたあと職が見つからず、やむなく手話通訳士の資格を取ります。やがて窃盗未遂で起訴されたろう者の法廷通訳を引き受け、それが過去に自分が通訳した事件とつながっていく。
ろう者と聴者のあいだで揺れる荒井の立ち位置と、二つの事件が交錯していく構成が物語の軸です。
感動ものだと思ったら、ミステリーだった
率直に言うと、想定と少しずれました。
レビューの雰囲気から、泣ける話だと思っていました。ところが聴き始めると、過去と現在の事件が絡み合う、きちんとしたミステリーでした。
ただ、ずれた分だけ損をした気はしません。純粋にミステリーとして面白く聴けました。謎の引っ張り方がうまく、ろう者の世界を知る面白さと、事件の真相を追う面白さが同時に進んでいきます。
ろう者は「耳が聞こえない人」としては見られていなかった
一番大きかったのは、ろう者が世間でどう扱われ、どう見られているかを知ったことです。
想像していたよりも、ずっと「障害者」としての見られ方をしていました。単に耳が聞こえないだけでなく、知的障害もあるかのような偏見の目で見られる。そういう現実があることを、この作品で初めて知りました。
もうひとつ知らなかったのが、手話が2種類あることです。日本語の語順に手話を当てはめた「日本語対応手話」と、ろう者のあいだで生まれた独自の文法を持つ「日本手話」。ろう者には、ろう者独自の言語体系があるのだと知りました。
そう考えると、ろう者は「障害のある人」というより、日本に住む外国人のように「別の言語で話す人」と見るほうが近いのではないか。そう見方を変えると、作中の出来事がまた違って見えてきます。
ろう者のコミュニティの存在も印象に残りました。コミュニティの結びつきが強く、社会への溶け込み方にもそのつながりが深く関わっている。知らなかったことばかりでした。
浮き立って見えた少女が、事件の中心にいた
※ここは少しネタバレを含みます。
物語の中で、ひとりの少女の存在が象徴的に浮き立って見えました。
この少女は何者なのか。ストーリーの中でどんな役割を持っているのか。きっと悲しい経験があって、人を疑う気持ちを抱えた背景があるのだろう。そう想像させられながら聴いていくと、事件の進展とともに少女の正体と、周囲との関係が少しずつ明らかになっていきます。
最後の結婚式のシーンが忘れられません。新婦が手話で、家族の前で最後の告白をする。今まで抱えてきたものを、ひとつずつ打ち明ける。とても悲しいのに、ある種の清々しさもある場面でした。
事件の真相を知ったとき、人はどうするべきなのか。登場人物が迷うところで、自分も「何が正解なのだろう」と考えてしまいました。答えは聴き終わった今も出ていません。
ナレーターの少し冷たい声が、荒井に合っていた
ナレーターは岡井カツノリさん。いい感じでした。
主人公の荒井は、どこか冷めた、人と距離を置くようなキャラクターです。その少し冷たい感じが、声の雰囲気でよく出ていました。感情を乗せすぎない読み方が、ろう者と聴者のあいだで揺れる荒井の立ち位置に合っていたと思います。
法廷のやりとりや手話の場面も、聴いていて混乱することはありませんでした。登場人物も多すぎず、ながら聴きでも筋を追えます。自分は1.4倍速で5日間でした。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ ろう者の世界や手話について、小説を通して知りたい人
✅ 謎解きだけでなく、人間ドラマの厚みがあるミステリーが好きな人
✅ シリーズものの1作目から入りたい人
❌ とにかく泣ける感動ものを期待している人
❌ スピード感のあるサスペンスを求めている人
まとめ
ろう者は「耳が聞こえない障害者」ではなく、別の言語で生きる人たちだった。
感動ものを期待して再生すると、少し違うかもしれません。でもミステリーとして面白く、聴き終わると世界の見え方がひとつ変わる一冊でした。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:岡井カツノリ / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:5日間
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
同じ社会派ミステリーで、こちらも過去の事件が現在とつながっていく構成です。手話通訳士の視点で描く本作と並べると、「事件の真相を知った人はどうするか」という問いが共通して見えてきます。



