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あきらめません!
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ひとことレビュー
痛快な選挙小説のはずが、一番残ったのは夫が村の考えに染まっていく場面だった。自分の「当たり前」が揺さぶられる一冊。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
noteのフォロワーさんに勧められたのがきっかけだった。
定年後の女性が、男尊女卑の残る田舎で政治に参加して村を変えていく。あらすじを聞いただけで面白そうだと思った。オーディブルの評価も高く、来年には映画化も控えている。これは期待できると思って再生ボタンを押した。
どんな作品?(ネタバレなし)
主人公は霧島郁子。共働きとワンオペ育児を乗り切って定年を迎え、夫の田舎に移住する。悠々自適のはずだった移住先で待っていたのは、女は口を出すなと言わんばかりの閉鎖的な地域社会だった。
失意の郁子に手を差し伸べたのは、老齢の女性市議・市川ミサオ。彼女の後押しで、郁子は市議会議員選挙に打って出る。
郁子が村の「おかしい」を次々ひっくり返すのが痛快
率直に、面白かった。
郁子は正義感があって、困難に真正面から向かっていく。その姿が清々しくて痛快だ。議員になった郁子が手をつけるのは、暮らしに直結する問題ばかり。待機児童、安全対策、天下り、議員の優遇。絵画の購入や視察旅行といった意味の薄い支出を止めて、若い人や女性の生活をよくするためにお金を回していく。
一つ解決するたびに次の壁が立ちはだかり、それをまたひっくり返す。この繰り返しが気持ちよくて、気づけば1.4倍速で3日で聴き終えていた。今の高市首相の取り組みを想起させるところもあった。
「ここまでひどくないだろう」と思いつつ、笑えなかった
地方では男性社会が強いと聞くが、自分は住んだことがない。だから聴きながら、実際はどうなのだろうと何度も疑問に思った。物語はデフォルメされていて、現実はここまでひどくはないと思う。
それでも笑い飛ばせなかったのは、次の場面があったからだ。
一番残ったのは、夫が村の考えに染まっていく場面
夫が昔の同級生を家に連れてくる。その男は太々しい態度で上がり込み、妻を蔑ろにして暴言を吐く。そして夫に吹き込む。お前は妻の尻に敷かれている、もっと男としての威厳を持て、と。
夫は反論しない。それどころか、段々とその考えに染まっていく。都内で何十年も暮らしてきて、そんな考え方ではなかったはずの人が、村に戻った途端に変わってしまう。
郁子はショックを受け、傷つき、夫の裏切りに怒る。村の男たちの横暴より、この夫の変化のほうがよほど刺さった。
自分の「当たり前」は、場所を変えると当たり前じゃない
この場面で思ったのは、自分が今の環境で当たり前だと思っている考えは、場所が変わればそうではないのかもしれない、ということだった。そして、何が正しいのかも分からなくなった。
女性の社会進出、男女を分け隔てない公平な社会。そこに違和感はない。だけど世界には、むしろ女性のほうが強い地域もある。インドネシアの西スマトラでは、女性が家や財産を継ぎ、男性は出稼ぎに出る。人の考えは、仕組みがそうさせるのだろうか。
作中には、議員の3分の1を女性にするという施策が出てきて、それは成功する。では逆に「3分の1を男性に」としたら、女性が強い村になるのだろうか。そんな想像を膨らませながら聴いてしまった。
ナレーターは早水リサさん。政策の話でも耳で追える
再生時間は10時間54分。1.4倍速で3日ほどで聴き終わった。
選挙や市政の施策は文字で読むと硬くなりそうだが、郁子の視点で物語が進むので、ながら聴きでも話が追えた。オーディブルの評価が高いのもうなずける。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 正義感のある主人公が、しがらみを突き破っていく話が好きな人
✅ 「自分の常識」を一度疑ってみたい人
✅ 映画化(2027年1月公開)の前に原作を押さえておきたい人
❌ 政治や選挙の話題が出てくる小説は避けたい人
❌ 地方の描かれ方がデフォルメされていると感じると冷めてしまう人
まとめ
痛快な選挙小説を期待して再生ボタンを押した。たしかに痛快だった。でも聴き終わって残ったのは、「自分の当たり前は、場所が変われば当たり前ではない」という問いだった。
男女平等が当然だと思っている自分も、どこかの村に移り住んだら、あの夫のように染まってしまうのだろうか。来年の映画で、この場面がどう描かれるのかも気になっている。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:早水リサ / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:3日間
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