天使のにもつ

画像:Amazon.co.jp

天使のにもつ

著者
いとうみく『空へ』で日本児童文芸家協会賞。本作は2020年の青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部の課題図書
ジャンル
中学2年生が職場体験で保育園に通う5日間
朗読

ミミオミの順位 50位/65冊

面白さ星3(5段階)

  • 耳向き度星4(5段階)
  • 再聴したい度星3(5段階)
4時間23分

Audible 版の再生時間

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ひとことレビュー

前半は正直びみょう。でも、ある園児が心を開いてから「楽そう」で保育園を選んだ中学生の目が変わっていき、最後の絵の場面で少し感動した。

レビュー日 ・書いた人 ミミオミ

なぜこの作品を選んだのか

Audibleでの評価が高かった。理由はそれだけです。

再生時間は4時間23分。オーディブルの小説にしては短めです。サクッと聴いてみよう、くらいの軽い気持ちで再生して、1.4倍速で2日ほどで聴き終えました。

あとで知ったのですが、2020年の青少年読書感想文全国コンクールで、中学校の部の課題図書に選ばれた作品でした。

どんな作品?(ネタバレなし)

主人公は中学2年生の斗羽風汰(とば・ふうた)。学校の職場体験で、保育園を選びます。

理由は「子どもと遊んでりゃいいってこと? ありかも」。楽そうだから、です。チャラくて、何も考えていないように見える、いかにも中2男子という少年です。

ところが、始まってみれば楽な仕事のはずがありません。園児たちに振り回され、保育士さんたちの仕事ぶりに驚く。そして園児の中に、どうしても気になる男の子が一人いる。そんな5日間の物語です。

著者のいとうみくさんは、20年近く保育雑誌で保育園の取材を続けてきた方だそうです。息子さんが職場体験に行ったときの話が、この作品のきっかけになったと語っています。

前半は正直びみょうだった

面白いかと聞かれると、最初はびみょうでした。

引っかかったのは、ところどころ大袈裟に感じる描写です。子どもの相手をするのがとにかく大変だとか、お化けが怖いとか。

初めて保育園に入った中学生の目線だと、そう見えるのかもしれません。それでも聴きながら「そこまでか?」と何度か思ってしまいました。前半は、この温度感になかなか乗れませんでした。

お昼寝をしない園児が、風汰に近寄ってくる

流れが変わるのは、風汰が気になる園児、しおん君の話が動き出してからです。

しおん君は、ほかの子と少し違います。お昼寝をせずに事務所にいる。みんながはしゃぐ泥んこ遊びに加わらない。家庭に何かを抱えているらしいことが、少しずつ見えてきます。

そのしおん君が、少しずつ心を開いて、風汰に近寄ってくる。ここから一気に引き込まれました。

しおん君をきっかけに、風汰は真剣に考え始めます。それまで見えていなかった、保育士さんたちの細かな配慮にも気づくようになる。一人ひとりの様子を見て、声のかけ方を変えている。その意味が、風汰にもだんだん分かってきます。

「楽そうだから選んだんだろ」にイラッとする

印象に残ったのは、同級生とのやりとりです。

楽そうだから保育園を選んだんだろう、と同級生に言われる。保育士の仕事を下に見るような発言も聞く。風汰はそれに苛立ちます。

でも、よく考えると、楽そうだから選んだのは風汰自身です。言っていることは矛盾しています。

ただ、この矛盾こそが、風汰が変わった証なのだと思いました。たった数日で、自分でも気づかないうちに、保育士という仕事の見方が変わっていたのです。人に言われてイラッとするのは、それが自分にとって大事なものになったからです。

預かっている子の家庭に、どこまで踏み込めるのか

もう一つ考えさせられたのが、仕事としての境界線です。

しおん君のことが心配でたまらない風汰は、何かしてあげたいと思います。でも、保育園が預かっているのは子どもで、家庭そのものではありません。どこまで踏み込んでいいのか。風汰はその線を意識し始めます。

保育士さんたちは、親の代わりになれるわけではありません。それでも、園にいる時間の中で、その子に本当に必要なことを少しだけ補うことはできる。子どもを見守り、親と一緒に育てている。

保育の仕事のこの感覚を、風汰が少しずつ理解していく。その過程を、中学生の目を通して一緒に体感できるのが、この作品のいちばんの良さだと思います。

職場体験が、本当にこうだったらいい

聴きながら、実際の職場体験もこうだったらいいのに、と思いました。

数日だけ職場に行って、言われたことをこなして終わり。そんな職場体験も多いはずです。でも風汰のように、一人の子どもと向き合って、仕事の意味を自分の頭で考える。たった数日でも、そういう成長があるなら、職場体験には大きな意味があります。

うちの子も、何年かすれば職場体験に行きます。そのときは、どこに行くかより、そこで何を感じて帰ってくるかを聞いてみたいと思いました。

最後の絵で、少し感動した

最後に風汰は、子どもたちから絵を受け取ります。

その絵を見ると、風汰がこの5日間で何を体験し、何を学んだのかが伝わってきます。言葉で「成長しました」と説明されるより、ずっと響きました。ここで少し感動しました。

オーディブルで聴いた体験

ナレーターは島田奈歩(しまだ・なほ)さんです。

4時間23分と短いので、1.4倍速なら2日で聴き終わります。職場体験の5日間を順に追っていく話なので、途中で止めても流れを見失いにくい。長編の合間に、軽い気持ちで聴くのにちょうどいい一冊でした。

こんな人におすすめ/向かない人

✅ 子どもがいずれ職場体験に行く親、いま中学生の子がいる親
✅ 働くことの意味を、まっすぐな目で見直してみたい人
✅ 長編の合間に、短めの作品をサクッと聴きたい人

❌ 最初から引き込まれる展開を求める人
❌ 大袈裟な描写が気になってしまう人

まとめ:「楽そう」から始まった5日間

「楽そうだから」で選んだ職場体験が、子どもを一緒に育てるという仕事の重みを知る5日間になる。

前半は乗り切れませんでした。それでも、しおん君との関わりと最後の絵の場面で、聴いてよかったと思えた一冊です。

聴いた日:2026年10月 / ナレーター:島田奈歩 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:2日間

同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。

こちらも、仕事に飛び込んだ若い主人公が、相手への細かな気配りを学んでいく話です。保育園と葬儀場で舞台は違いますが、働く姿勢が変わっていく過程が重なります。

→長月天音『ほどなく、お別れです』は自分の死に気づかない女の子が切ない。1週間で聴いたお葬式小説【オーディブル感想】

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