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天使のにもつ
Audible 版の再生時間
聴き放題の対象(2026年10月時点)
ひとことレビュー
前半は正直びみょう。でも、ある園児が心を開いてから「楽そう」で保育園を選んだ中学生の目が変わっていき、最後の絵の場面で少し感動した。
レビュー日 ・書いた人 ミミオミ
なぜこの作品を選んだのか
Audibleでの評価が高かった。理由はそれだけです。
再生時間は4時間23分。オーディブルの小説にしては短めです。サクッと聴いてみよう、くらいの軽い気持ちで再生して、1.4倍速で2日ほどで聴き終えました。
あとで知ったのですが、2020年の青少年読書感想文全国コンクールで、中学校の部の課題図書に選ばれた作品でした。
どんな作品?(ネタバレなし)
主人公は中学2年生の斗羽風汰(とば・ふうた)。学校の職場体験で、保育園を選びます。
理由は「子どもと遊んでりゃいいってこと? ありかも」。楽そうだから、です。チャラくて、何も考えていないように見える、いかにも中2男子という少年です。
ところが、始まってみれば楽な仕事のはずがありません。園児たちに振り回され、保育士さんたちの仕事ぶりに驚く。そして園児の中に、どうしても気になる男の子が一人いる。そんな5日間の物語です。
著者のいとうみくさんは、20年近く保育雑誌で保育園の取材を続けてきた方だそうです。息子さんが職場体験に行ったときの話が、この作品のきっかけになったと語っています。
前半は正直びみょうだった
面白いかと聞かれると、最初はびみょうでした。
引っかかったのは、ところどころ大袈裟に感じる描写です。子どもの相手をするのがとにかく大変だとか、お化けが怖いとか。
初めて保育園に入った中学生の目線だと、そう見えるのかもしれません。それでも聴きながら「そこまでか?」と何度か思ってしまいました。前半は、この温度感になかなか乗れませんでした。
お昼寝をしない園児が、風汰に近寄ってくる
流れが変わるのは、風汰が気になる園児、しおん君の話が動き出してからです。
しおん君は、ほかの子と少し違います。お昼寝をせずに事務所にいる。みんながはしゃぐ泥んこ遊びに加わらない。家庭に何かを抱えているらしいことが、少しずつ見えてきます。
そのしおん君が、少しずつ心を開いて、風汰に近寄ってくる。ここから一気に引き込まれました。
しおん君をきっかけに、風汰は真剣に考え始めます。それまで見えていなかった、保育士さんたちの細かな配慮にも気づくようになる。一人ひとりの様子を見て、声のかけ方を変えている。その意味が、風汰にもだんだん分かってきます。
「楽そうだから選んだんだろ」にイラッとする
印象に残ったのは、同級生とのやりとりです。
楽そうだから保育園を選んだんだろう、と同級生に言われる。保育士の仕事を下に見るような発言も聞く。風汰はそれに苛立ちます。
でも、よく考えると、楽そうだから選んだのは風汰自身です。言っていることは矛盾しています。
ただ、この矛盾こそが、風汰が変わった証なのだと思いました。たった数日で、自分でも気づかないうちに、保育士という仕事の見方が変わっていたのです。人に言われてイラッとするのは、それが自分にとって大事なものになったからです。
預かっている子の家庭に、どこまで踏み込めるのか
もう一つ考えさせられたのが、仕事としての境界線です。
しおん君のことが心配でたまらない風汰は、何かしてあげたいと思います。でも、保育園が預かっているのは子どもで、家庭そのものではありません。どこまで踏み込んでいいのか。風汰はその線を意識し始めます。
保育士さんたちは、親の代わりになれるわけではありません。それでも、園にいる時間の中で、その子に本当に必要なことを少しだけ補うことはできる。子どもを見守り、親と一緒に育てている。
保育の仕事のこの感覚を、風汰が少しずつ理解していく。その過程を、中学生の目を通して一緒に体感できるのが、この作品のいちばんの良さだと思います。
職場体験が、本当にこうだったらいい
聴きながら、実際の職場体験もこうだったらいいのに、と思いました。
数日だけ職場に行って、言われたことをこなして終わり。そんな職場体験も多いはずです。でも風汰のように、一人の子どもと向き合って、仕事の意味を自分の頭で考える。たった数日でも、そういう成長があるなら、職場体験には大きな意味があります。
うちの子も、何年かすれば職場体験に行きます。そのときは、どこに行くかより、そこで何を感じて帰ってくるかを聞いてみたいと思いました。
最後の絵で、少し感動した
最後に風汰は、子どもたちから絵を受け取ります。
その絵を見ると、風汰がこの5日間で何を体験し、何を学んだのかが伝わってきます。言葉で「成長しました」と説明されるより、ずっと響きました。ここで少し感動しました。
オーディブルで聴いた体験
ナレーターは島田奈歩(しまだ・なほ)さんです。
4時間23分と短いので、1.4倍速なら2日で聴き終わります。職場体験の5日間を順に追っていく話なので、途中で止めても流れを見失いにくい。長編の合間に、軽い気持ちで聴くのにちょうどいい一冊でした。
こんな人におすすめ/向かない人
✅ 子どもがいずれ職場体験に行く親、いま中学生の子がいる親
✅ 働くことの意味を、まっすぐな目で見直してみたい人
✅ 長編の合間に、短めの作品をサクッと聴きたい人
❌ 最初から引き込まれる展開を求める人
❌ 大袈裟な描写が気になってしまう人
まとめ:「楽そう」から始まった5日間
「楽そうだから」で選んだ職場体験が、子どもを一緒に育てるという仕事の重みを知る5日間になる。
前半は乗り切れませんでした。それでも、しおん君との関わりと最後の絵の場面で、聴いてよかったと思えた一冊です。
聴いた日:2026年10月 / ナレーター:島田奈歩 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:2日間
同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。
こちらも、仕事に飛び込んだ若い主人公が、相手への細かな気配りを学んでいく話です。保育園と葬儀場で舞台は違いますが、働く姿勢が変わっていく過程が重なります。



