看守の流儀

画像:Amazon.co.jp

看守の流儀

著者
城山真一『このミステリーがすごい!』大賞出身。2025年に竹内涼真主演でドラマ化
刊行
2019年12月
シリーズ
「看守の流儀」シリーズ1作目
ジャンル
石川県の加賀刑務所を舞台に、刑務官と受刑者をめぐる5つの事件
朗読

ミミオミの順位 51位/66冊

面白さ星3(5段階)

  • 耳向き度星4(5段階)
  • 再聴したい度星4(5段階)
11時間16分

Audible 版の再生時間

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ひとことレビュー

泣ける話ではなかった。でも看守は「怖い番人」ではなく「受刑者の最後まで寄り添う人」だった。刑務所の見方が変わる一冊。

レビュー日 ・書いた人 ミミオミ

なぜこの作品を選んだのか

刑務所の看守が毎日なにをしている人なのか、聴き終わるまで考えたことがありませんでした。

noteのフォロワーさんにおすすめしてもらった作品です。Audibleのレビューも評価が高く「泣ける」という声が多かったので、その心づもりで再生しました。

結果から言うと、泣ける話ではありませんでした。でも、別のものが残りました。

どんな作品?(ネタバレなし)

一言でいうと「刑務所の看守と受刑者をめぐる、5つの事件の連作短編」です。

舞台は石川県の加賀刑務所。期間限定で派遣された警備指導官の火石司が、所内で起きる問題を解きほぐしていきます。仮釈放された模範囚の失踪、受刑者向け講座での入試問題の流出、消えた健康記録。どれも派手ではなく、「塀の中」でしか起きない事件です。

5話は独立しているのに、全部がどこかでつながっていて、最終話で伏線が回収されます。各話の冒頭に挟まる受刑者の「プリズン・ダイアリー」も、最後に効いてきます。

泣ける話だと思って聴いたら、そうではなかった

率直に言うと、思ったほど感動する話ではありませんでした。

「泣ける」というレビューを信じてハンカチを用意するくらいの気持ちでいたので、肩透かしでした。

ただ、作品が悪いわけではありません。涙腺に訴える話ではなく、看守という仕事の中身を、事件を通して淡々と見せる話でした。聴き終わってみると、「泣ける」より重いものが残っていました。

看守は規律の番人じゃなくて、福祉を担う人だった

一番大きかったのは、看守のイメージが変わったことです。

聴く前は、看守も警察と似た仕事だと思っていました。ところが作中では、看守と警察は少し対立する関係として描かれます。警察は捕まえるまで、看守は捕まった後を預かる。同じ「法の側」でも、見ている方向が違うのだと思いました。

受刑者の背景もさまざまです。認知症やがんを抱えた人。所内のいじめで精神をやられた人。ほとんど過失で、事故のような理由で服役している人。極悪人ばかりではなく、模範囚もいます。

看守は一律に厳しくするのではなく、相手に合わせて介護をし、慰め、更生へ導いていきます。「規律を守らせる番人」のイメージが、「福祉を担う人」に変わりました。刑務所が「更生の最後の砦」と呼ばれる意味が、ようやくわかった気がします。

余命3か月の受刑者に、看守はどこまで踏み込むか

※ここは少しネタバレを含みます。

印象に残ったのは、末期がんで余命3か月と告げられた受刑者の話です。

この人は家族と不仲のままでした。けれど本当は家族思いで、誤解が生じているだけ。周囲には不倫をして罪を犯したと思われていますが、実際は義理の父の不貞を隠し、妻を思って不倫の形にしているだけ。罪そのものも、ほとんど事故でした。

事情がわかってきたとき、看守は迷います。見て見ぬふりをして獄中死を見届けるのか。真実を明らかにする手伝いをして、家族にまで踏み込むのか。

規則どおりなら「見届ける」だけで済みます。でもこの看守は、できる範囲で動きます。その葛藤と、やりすぎない踏み込み方が人間味にあふれていました。泣けるというより、じわっと残る話でした。

ナレーターは落ち着いた声で、聞き分けもうまい

ナレーターは誠さん。落ち着いた話し方が、刑務所の空気によく合っていました。

登場人物ごとに話し方を分けていて、性別がわかりにくい人物もうまく演じ分けています。看守も受刑者も人数が多いのに、誰が話しているか迷いませんでした。

連作短編なので、1話ずつ区切って聴けるのもオーディブル向き。1話が2時間ほどで、通勤の往復で1話のペースで進めやすい。筋も入り組みすぎていないので、ながら聴きで十分です。自分は1.4倍速で7日間でした。

こんな人におすすめ/向かない人

✅ 看守という仕事の実態に興味がある人
✅ 受刑者ひとりひとりの背景を描く、人間味のある話が好きな人
✅ 1話ずつ区切って、通勤時間に聴き進めたい人

❌ 号泣できる話を期待している人
❌ 派手な事件や、どんでん返しの連続を求める人

まとめ

看守は規律を守らせる番人ではなく、受刑者の最後まで寄り添う福祉の人だった。

泣ける話を期待すると肩透かしかもしれません。でも、塀の中で働く人の見方が変わる一冊でした。刑務所小説が初めての人にこそ、最初の一冊としておすすめします。

聴いた日:2026年10月 / ナレーター:誠 / 再生速度:1.4倍速 / 聴き終わるまで:7日間

同じ読書好きの方に、あわせておすすめの一冊です。

同じ事件ものでも、こちらは警察の側から描いた本格ミステリー。看守の側を描いた本作と読み比べると、両者の立ち位置の違いが見えてきます。

→櫻田智也『失われた貌』は流し聴きできない。3日で聴いた本格ミステリー【オーディブル感想】

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